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『会長からのメッセージ』(5) ガセットプレート

  • 2013年09月02日

この文章は以前会長からのメッセージとしてホームページに載せていたものです。(2003年11月)  お問い合わせが多いものを抜粋して再度掲載しました。


 通常の木造軸組構法では柱と横架材(胴差や桁のような水平にかかる部材)のなす角度は通常90度に造られています。しかし、ほぞとほぞ穴による接合は、構造力学的にはピン接合と言われるもので、横からの力がかかるとぐらぐら揺れてしまい、90度を維持することはできません。そこで、上棟の際、梁間方向および桁行方向のそれぞれに、適量の「仮筋かい」を入れて、揺れないようにしてから屋根の工事にかかります。「仮筋かい」がなければ、屋根の上での仕事など危なくてできません。経験豊富な大工さんが腕によりをかけて柱にほぞを、胴差や桁にはきつめのほぞ穴をつくり、かけやで叩き込んで作り上げたとしても、それでも仮筋かいは必要です。

 私が中学生の頃、9月の台風の時期でしたが、友人と学校から帰る途中、電車の窓から線路際の工事現場で上棟が済んだばかりの木造住宅の骨組みを見かけたことがありました。ところが、翌朝、往きの電車から見た光景は未だに忘れることはできません。なんと、折角、昨日上棟したばかりの住宅の骨組が完全に潰れていたのです。仮筋かいは当然入っていたと思いますが、風の強さが仮筋かいの耐力を上回ったためでしょう。木造住宅の骨組みは、節点(柱と横架材の交点のこと)がピン接合であるため、地震や台風のような横からの力に対して筋かいが充分でないと簡単に倒壊してしまうのです。

 木造と違って、RC造(鉄筋コンクリート造)では柱と横架材のなす角度が常に直角になるように接合されていて、しかも、その角度は大きな力が加わっても殆ど変化しない様に接合されています。こうした接合を剛接合と言います。建物の骨組みで、剛接合は骨組みの安定のために耐震壁とともに重要なファクターとなっています。そこで私は、剛接合の考え方を木造軸組構法に取り入れてやれば、筋かいの働きと相まってより丈夫な軸組ができるのではないかと考えました。

 TIP構法で筋かいを入れる場合は、筋かいと柱と横架材を1枚のガセットプレートで接合するので、その節点は剛接合に近いものになります。そこで、筋かいが入らない開口部周り等、外周軸組の仕口も剛接合にすることとし、そのため、土台と柱・柱と胴差・柱と桁の交点はできるだけ多くのガセットプレートを取り付けることにしました。

 ガセットプレートには2種類あって、実験開始の当初は構造用合板製のものを使用していましたが、平成5年度には、同じ厚さの構造用合板を薄い鉄板で補強した「補強ガセット」を使用しました。その結果が良かったので、さらに単体試験体による実験を重ねてその性能を確かめ、平成8年12月には「補強ガセットを用いた実大建物の水平加力試験」を公開で実施しました。公開試験の結果は目覚しいものだったので、一部の会員が限られた建築主に「スーパーTIP構法」(現在の広幅筋かいSUタイプ)という名称で提供してまいりました。

 平成12年4月に住宅の品質確保促進法が施行され、また、同年6月に建築基準法が改正され、木造住宅の性能の向上と品質の安定が厳しく求められることになったので、TIP構法はすべて「補強ガセット」を使用することで対応することにしました。

 ガセットプレートを使用することのメリットはもう一つあります。それは、いわゆる「接合部設計」ができることです。ガセット方式では筋かいの断面にあわせてガセットプレートの大きさや釘の本数を決めるという合理的な設計が容易なのです。

 TIP構法は単に「下地板を斜めに張る構法」と誤解されているようですが、それだけではありません。下地板の斜め張りと節点を剛接合にするガセットプレートの効果が相まって、巨大地震にびくともしない大きな耐震性が得られるのです。

建築基準法改正前
建築基準法改正後

 

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