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『会長からのメッセージ』(2) 躯体工事費について

  • 2013年08月09日

この文章は以前『会長からのメッセージ』としてホームページに載せていたものです。(2002年7月)  お問い合わせが多いものを抜粋して再度掲載しました。


 J電鉄R駅の変電室の構造設計を担当した時のことです。設計を終えて構造計算書と構造図を提出後、数日経ったころ、元請けのK建築設計事務所のS氏から電話が掛かってきました。用件はと聞くと「J電鉄の設計担当者が『構造計算を見直して鉄筋を減らして欲しい』と言ってきましたがどうでしょうか」とのことでした。結局S氏と関西へ同行してJ電鉄の担当者に逢うことになりました。J電鉄の設計担当者から改めて「設計を変更して外壁にタイルを貼りたい。そのための工事費を捻出したいので、構造計算書を見直して鉄筋を減らして欲しい」と言われました。私は元請のS氏の前で多少遠慮しながら、日頃の考えを率直に述べました。「公共的建築物は、大地震のときなど復興の拠点としての役割を担わなければなりません。だから、仕上げを落として丈夫な構造にしたいと言う話なら判りますが、仕上げを良くするために構造を落とせという様な考えには賛成できません」と。私の言葉が聞き入れられて、構造についてはもとの計算書と図面のとおりに施工されました。人は、その置かれている立場によって価値観が違うので、止むを得ないことと思いますが、一般に、設計者はデザインについては非常にこだわりますが、構造については確認申請が通りさえすればそれだけで十分と思っている人が少なくない様です。

 一方、NTTの前身である日本電信電話公社(以下電電公社と言う)とは随分永いお付き合いをさせていただきましたが、構造に対する認識がJ電鉄の方とは全然違っていました。当時は未だ自動交換機の時代でしたが、大地震にあっても通信機能を麻痺させてはならないという使命感からか、自動交換機室の構造の安全性には特に注意を払っていた様に思います。また、構造を大切にするために、ある時期からは躯体の構造設計は構造の専門家に直接発注して、電電公社の構造担当者と直接打合せをするというシステムに改められました。構造設計者の能力を十分に発揮させて、責任のある仕事をして貰おうと考えたためでしょうか。打合せのなかで、デザインのために構造を犠牲にする様なこととか、構造設計が完了した後に、鉄筋を減らして躯体工事費をもっと落とせという様なことは、一度として言われたことはありません。逆に、構造的に無理のあるデザインに対しては、それを改めさせて構造の安全性を優先するという考え方に徹していました。

 住宅の場合も当然こうあるべきだと思います。家族一人ひとりの生命と大切な財産を一瞬のうちに失う様なことが無いよう、構造の安全性を第一に考え、「丈夫な住まい造り」を心掛けることが大切です。そのためには、工事費の見積が予算をオーバーしても、躯体工事費が合理的なものである限り、それを削ったり減らしたりすることのない様にしなければなりません。

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